FOOD
まかなくていいよ。のオムライス
オムライスの卵をうまく巻けた試しがない。
どんなにおいしく中身のチキンライスが作れたとしても、
外側の卵が破裂していたら‥
オムライスの品格が落ちてしまったような気がする。
そんなこんなで、毎回細心の注意を払いながら
卵を巻くわけである。
火加減に気をつけたり、卵の数を増やしてみたり、
とにかく卵が破れないように‥
中のチキンライスがどうか、顔をださないように‥‥
だけど‥やっぱり今日も巻けなかった。完敗だ。
今日もママは
チキンライスの夢を叶えられなかったみたい。
ふわふわ卵に巻かれて素敵なオムライスになる夢を。
ため息まじりで食卓に並べる。
もっと深いため息が聞こえてくるのを
びくびくしながら (笑)
娘「まかなくていいよ」
私「え?」
娘「まかなくていいよ、オムライス」
私「‥なんで?オムライスだよ?
卵巻かないと意味ないじゃん」
娘「オムライスだからって
ぜったい卵巻かなきゃいけない決まりはないでしょ。
まかなくても上に卵のせれば、おいしいよ」
娘にそう言われてハッとする。
そうなのだ。
この世にぜったいしなきゃいけないことなんて、
ほんとうは存在しない。
私の人生にも、今と同じようことがいくつもあるかもしれないなぁ。
「こうしなきゃいけない、こうじゃなきゃいけない」
とくにだれかに強制されたわけでもないのに、
周りの目や常識を気にしすぎて頑張りすぎたり、
それが叶わなかったときに落ち込んで、
自己嫌悪におちいったり‥
でも実は「これが正解」なんて、
誰にもわからなかったりする。
たとえそれが自分が描いていた理想とは違ったとしても、
たどり着いたら先がハッピーだったら
それでOKな気もする。
気づいたら破裂したオムライスがのったお皿は、
もう空っぽだった。
「おかわりある?」
と聞いた娘がすでにチキンライスの入った
フライパンの前にいる。
「今度は私が巻いてあげるね」
楽しそうに卵液をフライパンに流し込みながら、
器用な娘はあっというまにチキンライスを
ふわふわ卵で包み込んでしまう。
なんだ。
こんなにも上手く巻いてくれる人が近くにいたんだ。
もう自分一人で頑張らなくったって、
いつでもおいしいオムライスが食べられる。
だから私のオムライスは、
これからも巻かなくったっていい。
巻けなくてもいいんだ。
娘の作ってくれたオムライスの卵の黄色が、
きらきらひかって眩しかった。