FOOD
みんなをおうえんするピザ
娘が「やりたい仕事」がみつからないことに悩んでいる。
小学校の卒業式で発表するテーマのひとつらしい。
あんまり悩んでいるもんだから、
「大人になってみつけますでいいじゃん」
といってみたら
「なんでもいいから職業を決めてきてと言われた」
とのこと。
うーむ。小学生もなかなか大変である。
周りの子どもたちはどうなのかと聞いてみると、
外科医や教師、漫画家など
すぐに答えが返ってくるそうで、ほぉーと感心する。
中には「野球選手に本当はなりたいけど、
親に言うと怒られるから学校の先生って言ってる」
など器用な意見もあって、
それがいいとか悪いとかはぬきにして
令和をいきる小学生はたくましい。
生まれて10年ちょっとで、未来の自分の姿を
少しでいいから決めてきてと言われるのは
なかなかほんと、むずかしいテーマだなぁとおもう。
それこそ今の小学生は昔と比べると超多忙。
朝から晩まで塾や習い事に囲まれて過ごす
子どもたちもたくさんいて、
しかもそれを生活の一部としてきちんと取り入れてる。
むしろ、習い事に行っていない娘の将来を
「塾行かなくて大丈夫?」と心配してくれる余裕もある。
そんなこんなで、わが娘には焦りにも似た
「取り残された」感があるようで、
分厚い職業辞典なんかをひっぱりだしてきて、
にらめっこしていた。
その悩ましげな小さな背中に母は心のなかで話しかける。
娘よ、母だってあなたと同じ悩みを抱えていたんだよ。
母はずっとうらやましかった。やりたいことをみつけて、
まっすぐ向かっていく友人たちが。
美容師、写真家、芸人。
ジュエリーデザイナーにエステティシャン。
母の自慢の友人たちは、やりたいことにまっすぐ向かって
夢を叶えた人たちなのさ。
笑ったり泣いたり、自信を失くしたり悩んだりしながらも
自分の心に正直に、今も夢に向き合ってる人たちなんだ。
そんな友人たちが、自慢でもあり
うらやましくもあるのだよ。
ときどきフッと孤独になって、
ぽつんと社会から切り離されたきもちになるとき。
そんなときは、今のあなたと同じように
職業辞典をにらめっこしたりもしたんだ。
だけどある日。
美容師の友人が、なにげなくおしえてくれた。
「やりたい仕事なんて、きみにみつかるわけないだろう。
うちで家族のために料理をして、皆に愛を送るのが
あなたのやりたい仕事なんだから」ってね。
それを言われたときにハッとしたんだ。
やりたい仕事や好きなことが、
外の世界だけにあるわけじゃないかもしれない。
たとえばさ、みんなの好きな具を好きなだけのせた、
とびきりおいしいピザなんか焼いちゃってさ。
ひさしぶりに会った彼らに、とびっきりの笑顔で
「きょうもきみはさいこうだね」って。
古典的だけど、おいしい料理と彼らへの変わらぬ愛で、
陰ながらみんなを応援するおうえん団長が、
母のやりたい仕事なのかもしれない。
娘よ。もちろん今のあなたに話しても、
きっと納得はしないだろう。
まじめなあなたのことだ。
おうえん団長になりたいです!
なんて先生にはいわないだろう(笑)
だから今はそっと見守ることにしよう。
きっといつか、母じゃないすてきな誰かが現れて、
ハッとするようなことをつたえてくれる。
だってあなたが最終的に提出した文章は
小学校の卒業文集で母が書いたものと同じだったから。
〝卒業テーマ・やりたい仕事について″
『自分の将来がどうなっているかなんて
やっぱり想像もできない。
だけど友達の夢が叶ってるといいなと思う。
自分のやりたいことをみつけれるように
何事も、一生懸命取り組める大人になります』
健闘を祈る!